パニック障害の治療

薬物療法+心理療法で克服できます

パニック障害は、脳内の神経伝達物質のバランス異常と、強いストレスなどが原因で発症します。薬による治療が有効であることが実証されていますが、死んでしまうかもしれないと思うほど辛いパニック発作や、また発作を起こしてしまうのではないかという強い不安や恐怖は、薬だけで消し去るのは難しいでしょう。
ですから、パニック障害の治療は薬物療法だけでおこなうのではなく、パニック発作の引き金になる刺激(電車に乗る、人ごみの中に入るなど)に対して強い不安や恐怖が起こらないようにする感情や思考のコントロールも同時におこなっていく必要があります。

投薬で、パニック発作を抑制します

パニック障害の治療は、まず、パニック発作を起こさないように改善することがから始めます。
服薬により、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れを改善し、不安やパニック発作が起きにくいようにすることができます。パニック発作が起きにくくなると、苦しい発作を繰り返すのではないかという不安や恐怖を軽くすることができます。

あせらずに、治療を受けてください

パニック障害の薬には、抗不安剤や抗うつ剤を用います。パニック障害の薬は、かぜ薬のように「飲んだらすぐ症状が落ち着く」というものではなく、効果が出るまで数週間継続的に服薬する必要があります。また、その患者さんに「合う」薬が見つかるまで、何度か薬を変えたり足したりしなければならないため、長期間薬を飲み続けることに不安を感じる方も少なくありません。
まずは、病気を治すために薬が必要であることを理解してください。不安があれば担当のドクターに伝え、きちんと説明を受けて、必要であれば薬を変えることも相談すると良いでしょう。

副作用があることを理解してください

薬には、程度の差はありますが、必ず副作用があるものだと理解してください。これは、うつ病やパニック障害の薬に限ったことではありません。

副作用には様々なものがあります。食欲の減退や、眠気、頭がぼーっとして集中が続かなくなったり、記憶力の低下、起きていられないほどのだるさ、吐き気を感じることもあります。
副作用が起こることで、「薬を飲むことは、本当は良くないのではないか」「このまま薬漬け(依存症)になってしまうのではないか」という不安が芽生えてくることは、仕方がないことだと思います。副作用が辛くて、自分の判断で薬を中断してしまう方も少なくないようです。また、インターネット上では、自分の判断で薬をやめたことで改善したとする体験談も多く見られるようですが、突然薬をやめることで、逆に症状が長引いたり、身体への負担がかかるリスクもあることも、知ってください。

副作用が強く、辛いのであれば、まずは担当ドクターに相談しましょう。薬の量をコントロールしたり、違う薬に変えることで改善するかもしれません。また、飲み始めの辛い時期を超えると、症状が改善されることもあります。

「副作用が生じる場合もありますので、いかに副作用を少なくし、治療を続けていくかが私たちの役割です。治療により発作が消失しても、すぐに服薬をやめてしまうと、ほとんどの方が再発してしまいます。したがって、発作がなくなっても1~2年間維持療法を続けることが、完治を目指すためにも重要です。」
板橋区 メンタルクリニックいたばし ホームページより

認知行動療法で、感情をコントロールします

パニック障害は、死んでしまうのではないかと思うくらい辛いパニック発作を繰り返してしまうことに強い不安や恐怖を感じる不安障害です。
薬でパニック発作を抑えても、「発作を起こした時と同じ場所に行くと、また発作を起こすのではないか(予期不安)」「電車の中など逃げ場のないところで発作を起こしてしまったら大変なことになるのではないか(広場恐怖)」という不安を生じることがあります。
この予期不安や広場恐怖は、パニック発作に対する恐怖や不安から起こります。認知行動療法により、発作の引き金となっている場面や場所はパニック発作とは関係ないということを知り、不安に慣れたり克服していきます。

間違った考え方を治しましょう(認知療法)

例えば、初めてパニック発作を起こしたのが電車の中だった場合、「電車に乗ると、発作が起きる」と思ってしまいがちですが、実際は、「電車に乗ること」と「発作が起きること」は関係ありません。
カウンセリングなどを通して、患者さんの思い込み(間違った認識)が事実ではないことを理解させ、正しい考え方(電車に乗っただけで発作が起きることはない)ができるようにするのが、認知療法です。

実際に行動して、理解しましょう(行動療法)

「電車に乗っただけで発作が起きることはない」と理屈でわかっていても、過去に発作を起こしたことがあることから、すぐに電車が平気になるわけではありません。「電車に乗っても平気だ」ということを、少しずつ体験して克服して行くことを、行動療法と言います。
行動療法は、いきなり電車に乗ったりするわけではなく、最初は十分に距離を取ったところから始めます。たとえば、写真を見たり、遠くから眺めたり、駅の近くに行ってみたりして、「発作が起きない」ということを実感します。
少しずつ距離を縮め、ホームまで行ってみる、空いている時間に1駅だけ乗ってみる・・・などを繰り返すことで、「電車に乗っても発作が起きない」ということを理解して、不安を克服していきます。

パニック障害を克服するコツ

早期に、専門のドクターの治療を受ける

パニック障害の治療は、まずは、投薬でパニック発作を抑えることが大切です。そのために、専門家の治療を受けることが必要です。早く治療を開始した方が、完治する可能性が高くなります。治療しないままでいると、重篤化したり、長引いたりすることがありますので、早めにメンタルクリニック(心療内科・精神科・神経科)を受診するようにしましょう。

危険なものではない、と理解しましょう

パニック発作で呼吸困難に陥ったりすると、このまま死んでしまうのではないかと不安になることでしょう。しかし、パニック障害は、生命に危険が及ぶようなものではありません。発作が起きてドキドキしてきても、「また始まった。今回もなんとかやり過ごそう」と冷静に対処できるように、病気のことをしっかり認識して、感情をコントロールする訓練をしましょう。

落ち着いたら、少しずつ出かけてみる

薬を飲んでいるだけでは、苦手な場所(発作の引き金となった場所)へ行けるようにはなりません。
症状が落ち着いて来たら、少しずつ苦手な場所へ出かけて行くようにしましょう。最初は家族や友達など、信頼できる人と一緒に近くへ行くだけでもかまいません。そこへ行っても発作が起こらないのだということがわかってくれば、最後には一人でも問題なく出かけることができるようになってきます。

発作の原因になりやすいものを避ける

生活の中で、パニック発作を誘発するものは極力避けることも効果的です。
パニック発作の誘因になりやすいのは、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインや、お酒のアルコール、タバコのニコチンなどです。摂取しなくても生活に支障のないものであれば、なるべく避けるようにしましょう。
また、二酸化炭素もパニック障害の誘因になります。空気の悪い場所は避け、部屋はこまめに換気するようにするようにしましょう。

ご家族の方へ:パニック障害の方への接し方

パニック障害について