うつ病の治療

専門家による<治療>が必要な病気です

うつ病は、脳の細胞が一時的に機能障害を起こしている「病気」ですので、患者さんが「がんばろう」と気合を入れただけでは治りません。メンタルクリニック(心療内科・神経科・精神科)を受診し、きちんと治療を受けることが何より大切です。
多くの場合、症状に対して薬物療法(抗うつ剤の服用)がとても有効です。しかし、ただ薬を飲みさえすればすぐに全快するものでもありません。

早く治療を受ければ受けるほど治りやすい

うつ病は、早期に投薬を中心とした適切な治療をおこなえば、完治が望める病気です。
しかし、うつ病にかかる方はまじめで、責任感が強い方が多いため、病院へ行くこと自体に罪悪感を覚えたり、自分で治さなければならないとひとりでがんばってしまう傾向があります。それが、症状が悪化したり、長引いたりする原因になってしまうのです。

おかしいな?と思ったら、病院へ行くことは、悪いことではありません。
むしろ、早く治療を受けて早く治ることが、自分にとっても周りの人にとっても良いことなのだと考えてみてはどうでしょうか?

良くなったり悪くなったりを繰り返しながら治ります

うつ病は、治療を始めたからと言って、一直線に良くなっていくものではありません。
調子が良い日もありますし、薬を飲んでも、布団から出られないくらい気持ちが沈む日もあります。そういった波を繰り返しながら、少しずつ良くなっていくものだと思って、あせらず、マイペースで治して行ってください。

うつ病は、一進一退を繰り返しながら良くなるもの。症状が不安定になったり、悪化したように感じても、「いつか必ず治るもの」と信じることが、完治する秘訣かもしれません。

うつ病は治る。でも、再発することがある

うつ病は治る病気ですが、残念ながら、再発率がかなり高い病気でもあります。
再発の原因の多くは、うつ病発症の原因が取り除かれていないためです。例えば、オーバーワークによるストレスが原因なのに、またオーバーワークを繰り返していたら、再発するのがあたりまえです。うつ病は、頑張りすぎたから発症してしまうものだと思ってください。病気になる前と同じだけのことができなくても当たり前です。
過度なストレスがかからないようにペースダウンするのも、再発を防ぐためのひとつの方法です。

薬(抗うつ剤)によるうつ病治療

減少している脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン)を、正常に近い状態に戻すために、抗うつ剤の服用が有効です。
効果については個人差があり、途中で変える必要があったり、すぐには効果があらわれないものもありますので、途中でやめたり、ご自分の判断で服用量を増減したりせず、決められた通りに毎日きちんと服用することが大切です。

また薬によっては副作用などもあります。薬の効果として集中力が低下したり、だるさを感じたりすることもありますので、合わないと思ったり、不安があれば、担当のドクターに相談するようにしましょう。

即効性があるものではありません

抗うつ剤は、かぜ薬や鼻炎薬のように、短時間で効果が出るものではありません。
個人差がありますが、決められた薬を決められた通りに継続的に服用することで、概ね2週間~4週間程度で改善効果があらわれて来ます。
効果が感じられるまでは、本当に良くなるのかと不安になることもあるでしょうが、あせらないことが大切です。

「薬の効果がない」と思ったら・・・?

抗うつ剤は症状に合わせて服薬しますが、相性があり、効果には個人差があります。
因果関係などがまだはっきりとわかっているわけではないので、かぜ薬のような「症状にぴったり合う薬」というものが存在しません。非常に種類が多い薬の中から、その人の症状に合うものが見つかるまで、症状の変化をみながら何度か薬を変える必要がある場合もあります。
そのため、「薬は効かない」「むだに薬だけ飲まされている」という不安を感じることがあるかもしれませんが、薬を変えたり増やしたりすることも、治療のひとつと考えられます。

副作用が強かったり、どうしても薬が自分に合わないと思ったら、担当のドクターに相談すると良いでしょう。

「薬漬け」の心配はありません

抗うつ剤そのものに、依存性や習慣性はありません。
複数の薬を服用したり、長期に渡る服薬が必要になることから、抗うつ剤の依存性や習慣性が心配になり、「薬漬けにされる」という不安や恐怖を感じられる患者さんが少なくありません。

「休む」ことによる治療

うつ病の治療は、薬を飲みさえすれば治るというわけではありません。
こころや体に<ストレス>という過度な負担がかかり、心身ともに疲れ切っている状態ですので、十分な休養を取り、心身をゆっくりと休めて疲れを癒すことも、大切な治療です。

「休む」ことは「必要」と割り切る

「服薬(抗うつ剤による治療)」と「休養」が、うつ病治療の両輪です。

うつ病にかかる方の多くは、自分が病気になって働けなくなったことに罪悪感を覚えたり、自分の心が弱いせいで病気になり、家族に迷惑をかけていると申し訳なく思っていますので、「休む」こと(何もしないこと)がとても悪いことのように感じることでしょう。
実は、逆なのです。頑張りすぎてしまったから病気になったのです。「病気を治すためには、休まなければならないのだ」と考え方を変えてみてはどうでしょう?

家族や周りの人に協力してもらう

仕事や家庭での責任が重く、病気だからといって休むことができない方もいらっしゃるでしょう。しかし、そう思いつづけて責任を負い続けてしまったら、病気は悪くなる一方です。
まず、ご家族に助けを求めましょう。仕事が負担になっている方は、ご家族に協力してもらって、職場の人(上司)に病気について理解してもらい、環境を調整してもらうよう協力をあおぎましょう。

誰でも、一生頑張り続けることはできません。たまには重荷をおろし、休むことも悪くないのだと、割り切ってみましょう。

ご家族の方へ:うつ病の方への接し方

うつ病について